2015年1月8日木曜日

雨染み ― 徹底調査から工事へ

2013年10月5日に投稿しそのままにしていました事例です。(もう一年以上も前・・・)



お客様の賛同を得て足場を設置し屋根の調査を行いました。瓦は陶器S形瓦の3色混ぜ葺きです。
屋根形状がこのように複雑でかつ、軒とケラバの出がないデザインになっています。
近頃このような形状の屋根が多くなっています。2014年5月14日の投稿でも書きました通り、採用理由は、市街地での隣地境界線の関係が主ですが、雨仕舞いに関しては不利な形状です。






試しに最頂部の棟瓦を取り外してみました。














棟瓦付近からの浸水があった場合には、雨水が建物の中に入ってしまう構造になっています。ナゼこのような仕組みになっているのかは新築時の工程に原因があります。
一般的に瓦工事の後に外壁を仕上げますので、モルタル塗りの場合には瓦の裏側にはモルタルを塗ることができません。またこの事例の場合、ルーフィング(防水シート)がしっかりと施工されておらず、棟瓦下地の木がむき出しになっています。明らかな手抜きであり欠陥です。





軒先部分から本格的に工事を開始。
早速、不具合が見つかりました。

ルーフィングが継ぎ足されていました。

矢印の幅約30cm程が軒先長さすべてに後張りされています。
結果として二重張りになっていますが、後から張ったルーフィングは継目から水が入るため、全く意味がありません

ルーフィング(防水シート)が継ぎ足されていました。


跡張りのルーフィングをめっくって見ると先張りのルーフィングに立ち上がりがないのが確認できます。
この納まりですと間違いなく雨漏りが発生します。

特に本件のような軒の出のない形状ですと、雨水が壁内に直接入っています。

想像ですが、工事中に立ち上がりがないことを指摘されたため取り付けたのかもしれません。
ケラバ部分。

ここも棟と同様にモルタルに段が付き、水を受ける形状になっています。


軒先部の改修 

野地板として構造用合板と水切り板金を取り付け吹き降りなどで瓦裏に雨水が入った場合にでも壁内に水が侵入しないようにします。水切り板金の上(コレが肝心!)に両面防水テープを貼りその上に新たなルーフィングを既存ルーフィングの下に差し込みます。

その後、当社オリジナルのステンレス軒吊金物を取り付け瓦を葺ける状態に。

軒先部分瓦の復旧。


棟部分にも水が侵入しないように板金を取り付け。

面戸(メンド) は漆喰ではなく、アルミと防水剤でできているハイブリッド乾式面戸で納めます。
棟瓦を取り付けるとこのような感じ。
ヨーロッパなどでは、近年よく見かける材料です。

ケラバ部分も水切り板金を取り付け、瓦を復旧。

この後外壁塗装を行った折りに水切り板金も外壁と色合わせを行い違和感なく仕上げました。

次に建物の床に床下点検口を新たに設置して床下に入れるようにし、調査。

※図面上では床下全体に人が入れるようになっていますが、実際には通じておらず新たに点検口を設置することとしました。



床束のない束石がいくつかあり、束石に載っていない床束もあります。

不思議に思って調べてみると床束が不要な箇所に設置してあるのと必要な箇所に設置されていないようです。

これも想像ですが、設計時に床構造の変更が行われたが基礎関係の変更がなされなかった。
若しくは施工業者に変更が伝わっていなかったと思われます。

必要な箇所で床束がない箇所が2箇所ありました。

これは施工業者の見落としだと思われます。



鋼製束を取り付けておきました。


















【感 想】
今回の改修工事は、僅かな雨漏りがあったためお客様からご相談を頂いたことに始まりました。
それ以前のも含め二回目だったためお客様が不安を覚えられたことで大事に至る前に対処できたと思います。
本件は、建売住宅ではなく設計監理付きの注文建築でしたが、細部にまで監理が行き届いていない印象を受けました。
実際に作業を行た職人さん達の技量によりこのようなばらつきが出ます。工事を請けた工務店も管理の不行き届きがあったと思われます。

【主だった工事内容】
・屋根改修 : 軒先・ケラバ・棟部分。
・外壁塗装 : 全面塗装。
・ベランダ防水
・床下修正 : 鋼製束を追加(本来あるべき姿に)

【工 期】
延べ4週間。

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